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2012年01月21日

祖先崇拝・自然崇拝の原点

手がけている仕事は、馮氏・諸見里家の系図です。

馮氏・諸見里は大里王子の子孫だと言われています。

大里王子とは、琉球王国・第二尚氏時代、第三代国王・尚真王の次男で、生まれたのは1494~1496頃だと思われます。

大里王子については、琉球王朝の歴史本にも、ほとんど書かれていないようですが、諸見里門中内の歴史に詳しい方から、次のようなエピソードを聞くことができました。

ある時、首里城内で内乱が起こり、大里王子は恩納村山田に逃れました。

王宮の騒動も収まり、周囲からは、首里に帰るように勧められた大里王子は、首里へ上がろうとしました。

ところが、大切な「王の子」であるという「証」を無くしてしまったために、王府からは「王の子」であると認められませんでした。

大里王子は、王家の一員であることは、諦めなければなりませんでしたが、その代わり、王府から、これからは安心して世を送るようにと、安心の「安」を名乗り頭に、「馮」の氏をもらったということです。

以来、諸見里門中の男子の名には、「安」の字が、名乗り頭に付くようになりました


その方の話では、このエピソードは、「王代記」または、「首里王朝記」に書かれているというので、沖縄市立図書館に、調べに行ってきました。

「王代記」そのものは無く、代わりに、「琉球王代記・氏姓集・年代記・系図手本」という本がありました。祖先崇拝・自然崇拝の原点

これは昭和45年に、琉球資料研究会が発行した本で、古い資料のため、図書館の書庫で保管されています。

貴重な資料ゆえ、その本を手にする時は、白い手袋を着用しなければなりません。

もちろん貸し出しはできず、コピーをとることも禁止のため、これはと思った箇所は、書き写しをしてきました。

胸ときめかせながら、古い資料のページをめくりましたが、「王代記」「首里王朝記」にも、大里王子に関するエピソードは、書かれていませんでした。

その代わり、「琉球王代記・氏姓集・年代記・系図手本」の冒頭に、素敵な一文を見つけました。
次はその写しです。

国造りの神話

大昔、天城(あまつづー天の神様の城)に、阿摩美久(あまみくー男神)・志禰礼姑(しねりくー女神)二人の神様がいた。

天帝子(天の最高神)が、二人を召して言われるには、
「この下(地上)に、神の住むべき聖地がある。だが、まだ島になっていないので、君等が降りて、島造りをせよ」

仰せによって、地上に降りてみると、聖地ではあるが、島になっていず、東海の波は西海に、西海の波は東海を洗い、二人とも迷ってしまった。

二人は天帝子から「石、土、草、木」を貰い受け、島造りをした。

国頭の辺土に「安須森―あすもり」、今帰仁に「金比武嶽―かなひやぶたけ」、知念間切に「知念森―ちねんもり」「斎場嶽―さいふぁたけ」、勝連屋慶名沖に「藪薩の浦原―やぶさつのうらはら」、玉城間切に「天続城―あまつづ」、久高島の「久場森―くばうもい」、首里王城内に「首里森・真玉森―すいもい・まだまもい」八ヶ所のお嶽(たけ)を立て、島々、村々に嶽・森を造った。

それから数万年経っても、人間がいないので、二人は天に昇り、天帝子から、人種として男・女の神を貰い受けた。

男女は別々に住んでいたが、風が縁となり、女神が孕み、三男二女が生まれた。

長男は、天孫子といって国王の初め、二男は各地の按司の初め、三男は百姓の初め、長女は君々(後の聞得大君)の初め、二女は祝々(村の祭りをするーのろ)の初めとなり、五倫、五行の人の道が開けた


上記の文は、袋中上人著の「琉球神道記」、摂政羽地王子朝秀(向象賢)著「中山世鑑」、二つの書からの抜粋だと、書かれています。

そして冒頭文は、次のように締めくくられています。

神話を科学のメスでいぢくり廻すのは冒涜も甚だしく、遠い祖先の夢と希望が秘められ、民族圏内の共通の喜怒哀楽も神話から生まれてくるし、民族の連帯感もこの絆なくしては生まれ得ないのである。

太陽崇拝、火の神崇拝、森、岩、山、自然崇拝は、宇宙創造の神に対する、恐れと感謝の祈りである


この文は、「琉球王代記・氏姓集・年代記・系図手本」を編集した、琉球資料研究会の比嘉寿助氏が書かれたもののようです。

また、編集後記にはこう書かれています。

『「温故知新」、私たち同胞沖縄人は、祖先崇拝の美風があり、物質的に貧しくとも、天然の天災地変、又は「薩摩軍の侵略」「米・英軍の攻撃」等の苦難の道にも堪え生き延びてきた。

血のつながりの祖先を知ることは、郷土史を知る平坦の大道であると同時に、他系を尊重し、「敬天愛人」の哲理を知り、人生を豊かに生きる方法である・・・』


これを読んだ時、沖縄の祖先崇拝・自然崇拝、そして、ウチナ~ンチュが家系図作成に熱心な理由がわかったように思いました。


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